ノラネコ問題by S10186507000001in お知らせon 投稿日: 2024年2月27日2024年2月27日 目次1 ノラネコの増加2 ノラネコをめぐる苦情の増加3 地域ネコの誕生4 多様化する地域ネコ活動5 TNR先行型地域ネコ活動 ノラネコの増加 ネコはもともと高い繁殖能力をもっています。しかし外の厳しい環境ではたくさんの子供が生まれてもそのあと生きていくことは難しく、この繁殖能力は抑制されてきました。ところが、近年ノラネコは爆発的に数を増やし、多くの問題が発生しています。このノラネコ増加の背景には様々な要因が関与しており、それは主に2つに分類されます。 ①環境的要因 気候の変化・・・地球温暖化による影響で温暖な気候になった イヌの飼養管理の徹底・・・ネコの天敵であるノライヌが減った ②人の要因 エサを与える人・・・昔に比べ良質なエサを人が与えるようになった ネコを捨てる人・・・飼養管理が緩く、捨てられたネコが個体を増やすこうした環境の変化、エサの質向上によって子ネコの生存率・ネコの健康状態が向上していきました。さらに捨てネコが増えることによって、ノラネコの増加は加速していったと考えられます。 ノラネコをめぐる苦情の増加 ノラネコの増加に伴いノラネコをめぐる苦情も増加していきました。このノラネコへの苦情は大きく2種類に分類されます。①糞尿被害や鳴き声といったネコの行動・習性に関する苦情②人間のエサやり行為、とくにそのマナーに対する苦情 エサやり行為は動物愛護の観点から昔から行われてきました。しかし、近年はキャットフードの登場により持ち運びが可能になり、エサを与える場所が家の敷地内から外へ変化していきました。多くの人が利用する公園などの公共施設でエサを与えるようになったことで、エサやり行為が問題視されるようになったと考えられます。また、人が与えたエサでネコは庭やプランターに糞をし、置きエサは周辺環境を汚します。そして、健康状態の向上でネコは増え、苦情はさらに増加していきました。 地域ネコの誕生 このように地域の中で苦情は大きくなり、 ノラネコに迷惑している人とノラネコにエサをあげ続けたい人が対立していくようになりました。 こうした問題への解決策として、ノラネコを排除して解決するのではなく、地域の中で管理し、 妥協点を探しながら共存していく「地域ネコ」という考え方が生まれました。 自治体として初めてノラネコを地域コミュニティの問題をしてとらえたのが、 1997年の横浜市磯子区の「ホームレス猫防止対策」という取り組みです。 2年後に策定された「磯子区ネコ飼育ガイドライン」はさまざまな区民の声を集結して作成され、 その過程で”地域ネコ”という言葉が生まれました。 このガイドラインでは地域ネコを次のように定めています。 「ノラネコを不妊去勢の徹底、エサの管理、フンの清掃、周辺美化などの地域のルールに基づいて適切に飼養管理し、 ノラの数を今以上に増やさないで一代限りの生を全うさせることで周辺住民の認知が得られたネコのこと」 単に地域にいるノラネコ=地域ネコというわけではなく、 地域にいるノラネコを管理することで地域ネコと位置づけていることが注目すべき点です。 多様化する地域ネコ活動 その後メディアの力もあり、”地域ネコ”は全国に広がり、地域に合わせた様々な取り組みとして実施されていきました。しかし、全国に広まるにつれ身勝手な解釈や問題点も出てきました。そもそも地域ネコの取り組みはすぐに効果の出るものではなく、自治体や地域ボランティアが協力し粘り強く続けていかなければ成り立ちません。多くの人々が関わる活動であるため意見は多様化し、実行に移るまでに多くの時間を要することもあります。このようにして活動が実行できないまま時間がたち、ノラネコの倍増によって問題が深刻化してしまう例や、一度取り組みを始めても活動資金や重労働な活動により継続が困難になった例も出てきました。また、「地域ネコ」という言葉をエサやりの正当化に使用する身勝手な解釈も生まれていきました。 TNR先行型地域ネコ活動 そうした中で、広義の地域ネコ活動であるTNR活動が広まっています。TNRとは「Trap(トラップ):捕獲、Neuter(ニューター):不妊手術、Return(リターン):ネコを元の場所に戻す」の略で、ノラネコを捕獲し避妊去勢手術を施し元の場所に戻す、という一連の流れを言います。 自治体や法人ではこの活動に対して助成金を出しているところもあり、今では多くのボランティア団体が実施している活動です。従来の活動がノラネコをめぐる苦情を減らすことが目的であるのに対し、TNR活動はノラネコの数を減らすことを目的としています。どちらの活動もノラネコの数が減少し、結果としてノラネコをめぐる苦情の減少につながることは変わりません。しかし、TNR活動はノラネコを管理するわけではないため、地域の中でルールを決める手間がなく、すぐに活動を実行できる点が異なります。この活動で手術をしたノラネコは目印として耳をカットされていることが特徴的で、その耳は見た目から「サクラカット」とも呼ばれています。これは目視確認できる目印となり、ノラネコがもう一度捕らえられるリスクをなくす目的があります。このやり方も徹底されているわけではなく、手術したノラネコがもう一度捕らえれることも少なくありません。また、こうした活動が進んでも全てのノラネコを捕まえることはとても難しく、そうして取りこぼされたノラネコから新たな命は生まれていきます。